夢の途中ブログ

プライドの柔らかいところを

春はあけぼの

春は露出狂の季節である。


雪が溶け、桜が咲き、露出狂が出る。
女子校付近というのは露出狂が頻繁に観測される地域である。
春が先か、露出狂が先かというくらい。

それはさすがに言いすぎたけど、私も学生生活の中で幾度か露出狂に出くわしたことがある。


このブログを読んでいる人の中に、ボクワタシ露出狂してるよーという方がいても名乗り出なくて結構です。

彼らは女子高校生の印象に残ることが目的だと聞くけど、実際大した影響は与えていないと思う。
学生の多忙な日々の中で印象に残るほど自分が特別な存在だと思うなよ。 


「お、春か」くらいなもん。
裸でも過ごしやすい気候になったから出るなんて考えがゆとり。 
吹雪の中、色々縮こまりながら出てくるくらいの自己プロデュースが無きゃ競争社会で生き残れない。



きっと多くの学生にとって露出狂などその程度のものだけど、私には1人印象に残っている露出狂がいる。


今年の春、遅刻ギリギリで通学路を歩いていた。
朝礼で古文単語のテストがあるから朝礼には間にあわなくてはいけない。

走るとさっきまで電車内で確認していた古文単語が抜ける気がして早足で登校していた。

余談だけど、走ると人はちょっとバカになるのだと思っている。


その私の肩が後ろからぽんぽんと叩かれた。


振り返ると全裸の男性がいた。

厳密には全裸であることをちゃんと確認してはいない。
眼球が広範囲の肌色を確認した時点で目線をそらしたので確実ではないが、まぁ全裸だったと思う。
全裸ではなきゃおかしいくらいの肌色の量だった。


おっとおっと。
いけねぇいけねぇ。
露出狂見ちまった。
と思いながらまた歩き出す。
ここで走るのも負けな気がしてさっきと同じペースで早歩きを続ける。


今じゃねぇよ。

見りゃわかんだろ。
超急いでんだわ。
私が鈍足であるがゆえに歩いてるようにしか見えなかったとしたらごめんな。


遅刻。
古文単語。
眠い。

今私の脳内はこのトップ3が占めている。
そこにお前の全裸は入り込めない。

残念。

かたはらいたし。


案の定、そのまま露出狂が付いてくることはなかった。
ただ私の背中に向かって彼は言葉を放った。



「なぜ?」


と。


めちゃめちゃに腹が立った。

なぜ?じゃねぇよ。

お前は絶対なぜ?じゃねぇよ。
お前は疑問を抱くな。1ミリも。
こっちがなぜ?だわ。
なんで裸を見せた上に質疑応答までさせてもらえると思ったんだよ。


わけわかんなくなってそこから走って学校に向かった。

古文単語のテストの結果までは覚えていない。



女子高校生の記憶に残ることが露出狂の目的なのだとしたら、彼はその目的を十分に果たせたことになるだろう。


もしかしたらそういう魂胆なのかもしれない。
なんせもう4ヶ月くらい前のことだが私は鮮明に覚えている。



彼の肌色でも顔でもなく、「なぜ?」と投げかけたその少し高めの掠れた声を。